KAZUfoto(カメラマン)-橋本和典さん

KAZUfoto(カメラマン)-橋本和典さん

親子ポートレイトの野外撮影 橋本和典さん

3度の飯より好きな趣味を生かして独立できたら・・・誰でも一度はそんな夢を思い描いたことがあるのではないでしょうか。写真家・橋本和典さんはもとエンジニア。週末起業経験を生かして一本立ちを果たしました。当時、撮り続けた人物ポートレートを「kazufoto野外親子撮影」というユニークな商品に発展させ、現在、多彩なカメラマン活動を展開中です

週末起業の内容についてお聞かせください
前職はコニカのエンジニアでした。写真を焼き付けるミニラボの開発部門に所属しており、かなり多忙な日々を過ごしていたのですが、合間を見ては北海道などへ撮影旅行に出かけていました。このとき撮りためた写真を、広告代理店に提供していたのです。1点につき1~2万円、雑誌表紙でも5万円と低価格でしたので、月商は数万円程度。それでも継続的に販売を続けていました。収入の多寡は別として、自分の写真がお金になること自体、嬉しかったですね。

営業活動はどのようにおこなっていたのですか
アマチュアカメラマンにとって、作品を売り込むのにもってこいの機会が写真展です。雑誌や新聞などに告知されますので、多くの人に見てもらえますし、仕事のチャンスも広がります。カメラマンとして「箔」をつける、大切な登竜門でもあります。とくに注目度が高いのは、大手カメラメーカーの運営する賃料無料のギャラリー。開催期間は2週間ほど設けられており、1万人以上の来場者が見込めます。

審査は厳しいものですが、積極的に申し込みをおこない、ミノルタ、ペンタックスなどのギャラリーで3度、開催することができました。反響はそれなりにありましたよ。表紙デザインを手がけるデザイナーさんから声がかかり、表紙写真を提供したこともあります。

また、社外の人脈作りにも力を注ぐようにしました。撮影旅行などでは、なるべく周囲の人に声をかけて友達になり、名刺代わりに作品を見せて歩いたものです。写真を提供していた広告代理店も、旅先で知り合った人から紹介されました。当時の人脈は、フリーになった今でも貴重な財産です。

独立の経緯をお聞かせください
やがてカメラの持てない勤務時間をつらく感じるようになってしまいました。そこで、思い切って会社を退社したのです。

とはいえ、すぐにフリーカメラマンとして活動を始めたわけではありません。青年海外協力隊に参加し、2年間、ガーナの技術専門学校で写真学科の講師を務めました。じつは私はかつてボランティア休暇を取り、青年海外協力隊員としてモルディブ共和国で働いた経験があります。さすがに2度のボランティア休暇は取れないので、思い切って会社を辞めることにしました。どうしても現地で撮影活動がしたかったものですから。いずれ独立するつもりだったので、よいきっかけなのではと考えました。

帰国してから、本格的に写真家として活動を開始したのです。独立後は、雑誌グラビア撮影、学校行事撮影やアルバム制作、ステージの撮影などを引き受けるようになりました 。

主力商品「kazufoto野外親子撮影」についてお聞かせください。他の記念撮影との差はどんな点にありますか
七五三などに子どもの記念写真を依頼する機会は多いかと思うのですが、ポーズも構図も、いかにも「記念」的で、堅苦しい雰囲気のものがほとんどです。しかし、「kazufoto野外親子撮影」では、子どもや両親のさまざまな表情や動きをとらえ、作品に仕上げます。

キャッチフレーズは「いまのそのまま ありのまま」。撮影場所は公園です。滑り台で遊ぶ女の子。お父さんにじゃれる男の子。子どもたちの大好きなアウトドアだからこそ、スタジオでは見ることのできない、生き生きとした瞬間を引き出すことができるのです。

撮影時間も1時間と長めに設定。リラックスしたムードの中で自然に振舞っていただきます。撮影費は5000円。通常のスタジオ撮影や野外撮影などと比べ、格安の料金設定といえるでしょう。

どうしてこのビジネスモデルを思いつかれたのですか
フリーになった当初は、受注した写真撮影だけでは、とても食べていけませんでした。そこで地元の親子ポートレイト教室の講師を務めたのです。ところがお母さんたちから「ウチの子を撮影してほしい」という要望が数多く寄せられるようになりました。

子育て中のお母さんなら、誰しも我が子の成長記録を残しておきたいと考えるでしょう。母親向けのデジタルカメラやビデオも市場に多く出回っています。しかし、自分が撮影するのでは今ひとつ技術が心もとない。一緒にカメラに収まることもできません。プロの写真家に撮ってもらえたら、という潜在ニーズはけして少なくないのではないでしょうか。

サラリーマン時代、北海道やモルディブの大自然をバックに人物を撮り続けていましたので、技術的には絶対の自信がありました。そこで試行的にサービスを開始し、そののち、正規価格で本格的に商品化しました。評判は思ったとおり、上々です。地元のお母さんたちの間に口コミで広がり、26家族から注文をいただきました

売り上げはどの程度ですか
昨年の売り上げは60万円ほど。春と秋の2シーズンのみの営業だったのですが、とくに秋は年賀状用の家族写真を申し込む人が多かったです。今年度は通年商品として宣伝活動をおこなう予定。また、個人だけではなく、保育園などへも積極的に売り込みたいと考えています。

現在、インターネットによる営業活動はおこなっていますか
写真家としての橋本和典の作品を広く知ってもらうため、メールマガジンを配信しています。タイトルは「熱いくに暑いひと温かいこころ」。青年海外協力隊時代に、取り続けた作品を、短文とともに紹介するものです。まぐまぐの「写真」カテゴリでは、10番目にランクしています。スタートして半年ですが、日刊ですので、すでにVol.190に達しています。とはいえ、読者数はまだ670人。内容面を工夫して、もっと伸ばしたいですね。

フリーの写真家となった今、週末起業時代にはどのような意味があったと考えますか
多少なりともビジネスの世界に触れることで、業界の動向を感じ取ることができました。料金設定や、顧客に好まれる写真の傾向など、趣味に徹していたら、見えなかったはずの部分は多いですね。

また、当時は本業の収入がありましたから、今よりずっと機材や撮影旅行に費用をつぎ込むことができました。あのころ、週末起業として腕を磨き、撮影を通していろいろな人との出会いが持てたからこそ、現在の自分があるのだと思っています。